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必要になったら電話をかけて(2)

「そもそも小説とは、ヘンな人たちが、ヘンなことをしでかす物語である。

普通ならやらないだろうこと、しなくてもいいことをしてしまう人たちの人生が描かれている」

昨日、書店でたまたま目にとまり購入した齋藤孝の「三色ボールペン読み直し名作塾」にある一節です。

レイモンド・カーヴァーの短篇集「必要になったら電話をかけて」と「たのむから静かにしてくれ」の10作品ぐらいを読んで、カーヴァーの小説って何だろうと考えていて、いろんなことが浮かんできました。その中でまとまったものを昨日の記事に書きました。

そして斎藤孝のこの言葉に「そうそう、それ!」と思わず膝を打ちました。僕の頭の中でもやもやとしていたものを見事に言い当てているのです。さらには、

「ヘンなやつではあるが、同時のそれは『どこかで一歩間違ったら、自分だってこうなってしまうかもしれない』と思うような感情の動きだったする」

まさにそうなんですよ。

カーヴァーの描くシーンと作中人物の心の動きと行動が、「僕もそうだ。そう思うかもしれない。そう行動するかもしれない」と思わせるのです。他人事ではないのです。僕の心を見透かしているような感じさえします。

怖ろしいといえば怖ろしい。一方で「共感」もする。
共感・・・、何やらしっくりせず、違和感をもって使いましたが、適当な言葉が見つかりません。
うまく言えませんが、強烈に惹きつけられているのは事実です。


さて、短篇集「必要になったら電話をかけて」、死後発見された未発表原稿をまとめたものです。

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5つの短編小説があります。
「薪割り」「どれを見たい?」「夢」「破壊者たち」「必要になったら電話をかけて」

それぞれに魅力ある作品です。今のところ僕が抱くカーヴァーのイメージに沿ったストーリーです。
しかし「薪割り」は異色です。あらすじを書くのは野暮なので書かない、というのが小説のブックレビューを書くときのスタンスですが、あえて破ります。

アル中で病院に入っていたAが退院しましたが、奥さんは他の男を作って家から出ていきました。
Aは元の家を出て、B夫妻の家に間借りして住みます。
Aは失業中です。
Aはじっと家にこもっています。B夫妻が仕事に出かけるのを待って行動を始めます。
あるとき、Bの家に木材が運び込まれます。BはAに休日に「薪割りをするのだ」と言います。
Aは自分にさせてほしいと言い、了承を得ます。
Aは黙々と作業をします。朝からやり始めて、日が暮れてもやり、最後までやり遂げます。
AはBに家を出ると告げ、出ていきます。

あらすじを書くと、どうということもないものですが、Aのじっと家にこもっているときの様子を読むと、自分が失業していた時のことを思い出しました。数回失業しているのですが、その経験もあってAの鬱屈とした感情や行動パターンが我がことのようによくわかるんですね。

それから“薪割り”をすることで何か吹っ切れたのでしょう。これが再出発の契機になります。
薪割りをしている作業の描写から、家を出ていくところの過程にすごく共感したのです。(この場合は、ほんとに共感しました。違和感なく使っていません)

鬱屈としたときは思いっきり体を動かす、そして汗を流す。または何でもいいから一つのことを集中してやってみる。そんな教訓を見出すこともできるでしょう。そう書きながら、安っぽいな~と恥じてきます。
安っぽい教訓を引き出そうとせず、小説の中にどっぷりはまればいいと思います。「薪割り」はそうすることで、生きる力を与えてくれる作品だと思います。

一方で、生きる力を得たいから読むというのも、なにやら違うような気がします。ただ無になって読むのがいいのではないかと思います。


今のところ10作品ほどしか読んでいませんが、再生とか再出発をテーマにしたものはこの作品だけです。そう意味で異色です。
これからカーヴァーの短篇をどんどん読んでいきます。どんな作品に巡り合えるか楽しみです。

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まとめtyaiました【必要になったら電話をかけて(2)】

「そもそも小説とは、ヘンな人たちが、ヘンなことをしでかす物語である。普通ならやらないだろうこと、しなくてもいいことをしてしまう人たちの人生が描かれている」昨日、書店でたまたま目にとまり購入した齋藤孝の「三色ボールペン読み直し名作塾」にある一節です。レイ...

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