病む女はなぜ村上春樹を読むか

小谷野 敦「病む女はなぜ村上春樹を読むか」

タイトルに惹かれて読んでみました。
半年かもう少し前に小谷野さんの本、「日本人のための世界史入門」を読んだことがあって、面白そうだと思ったのです。

日本人のための~は、“客観的かつバランスよく”というスタンスで書いていません。小谷野節といっていいくらい独自色を出しています。酒でも飲みながら、世界史放談を聞いたら楽しいだろうなと印象です。

小谷野さんは文章がうまいです。すらすらと読ませる力は抜群のものがあります。ただ、内容があるかどうか、深みがあるかどうかとなると疑問が残りますが(笑)

先ほど「小谷野節」という言葉を使いましたが、この「病む女は~」では、村上春樹嫌いを前面に押し出した小谷野節炸裂という感じです。だから評価は極端に割れるでしょうね。ハルキストは最低の評価をし、春樹嫌いは大拍手という風に。

僕は村上春樹の作品は好きで多くの作品を読んできました。でもハルキストという部類には入っていないと思います。だから冷静に読めたと思っています。

明治~大正~戦前の文学史と戦後の文学史を語りながら、その系譜のなかで村上春樹を位置付けて語っています。その文学史の語りの部分は面白いですよ。特に川端康成、三島由紀夫、大江健三郎のあたりが。いっぱい読み込んでいるし、多くのことを調べて知っているなという感じがします。それを小谷野節で語るから面白い。

ただ好き嫌いがはっきりしているし、理解できるものとできないものの線引きがはっきりして、ズバズバと書いています。ここでも評価が分かれるでしょうね。
僕は言いたいことを物おじせず書くのはいいことだと思います。ただ、小谷野さん、人間として狭量だと思います。そこが残念なところ。

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それからダメだしを一つ。
「病む女はなぜ村上春樹を読むか」というタイトル、小谷野さんが考えたのか、編集側から出てきたのか?
なぜ と謳っているのに、それについての論考がほとんどありません。

「私の周囲では ~ 読んだことがない、という人が多いが、村上が好きだという人は、親との関係で大きな傷を負っている人か、精神を病んでいる人たちであり、恐らく村上自身が、何らかの形で、不幸な子供時代を送ったのだろうし、そういう人が多いからこそ、村上は売れるのだろう」 (P183)

これだけを見ると、村上春樹を読む人は、全て親子関係や精神に何か問題を抱えていると受け取ってしまいます。本書の他の部分も似たような記述です。

十把ひとからげでそんなことを言っていいのでしょうか?

小谷野さんの周囲にそのような人がいても、日本や世界の村上ファンが全てそうだとは言えないでしょう。


村上読者層に調査して、病んでいる女性と小谷野さんが判定した方をできるだけ多く協力してもらって、なぜ村上春樹を読むのかと突き詰めて考えてほしかった。

しかし、そういった形跡が本書からうかがえません。

それが残念であり、タイトルに偽りありと文句が言いたいところです。


ちなみに「病む男」は村上春樹を読むのでしょうか?


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