ながい坂(2)

山本周五郎「ながい坂」より

三浦主水正は、屈辱的な事件がきっかけである決意をします。簡単に言えば出世するぞということです。下級武士に対する差別をなんとかしたいという思いからきたもので、出世そのものは手段であって目的ではありません。

疎む者は疎め、だがおれはそんなことでへこたれやしない。どんな障害があっても、おれは自分の選んだ道をあるいてやるぞ」 (上巻P83)

武士の中でも上下の差があります。下級武士から上級武士へのぼっていくことは、それぞれに嫌われることを意味します。それをものともしないと強く決意しているわけです。
出る杭は打たれる日本社会において、また身分差の厳しい江戸時代において、それは並々ならぬ決意です。そして主水正の行動のエネルギーになります。

しかし、その行程において様々な困難や軋轢に遭遇します。

挫けそうになるんですね。

学問の師にそれを話したら「そんなことが気になるのか、そういう問題は初めから覚悟の上ではなかったのか」と叱咤されます。

いろいろとかわされた会話から次の言葉もでてきます。
人間というものは、自分が正(まさ)しい、と思うことを固執するときには、その眼が狂い耳も聞こえなくなるものだ、なぜなら、或る信念にとらわれると、その心に偏向が生じるからだ」 (上巻P85)

これ、名言ですね。山本周五郎の小説には、こうした名言がいっぱい出てくるんですよ。
一方で鋭い人間観察の中から導き出された言葉もあります。たとえば
人間にはいろいろな型があり生きかたがある。たいていは矯正してゆけるものだが、ときにはそれができず、自分で自分にひきずられてゆく者もある、そこが世の中の面白いところかもしれないがね」 (上巻P104)

人間がみながみな順調に成長するとは限らない、二十歳でだめになる者もあろうし、五十歳でなお伸びる才能もある」 (上巻P167)

蟹は横に這う。まっすぐにあるけと云うほうがむりだろうな」 (上巻P391)

この3つに反発を感じる人がいるかもしれませんね。ありのままの人間をとらえていることを認めざるをえないでしょう。


おとし穴を知らない者は、落ちてからでなければ、そこにおとし穴があることは気づかないでしょう」 (上巻P185)

これ、よくわかりますね。僕なんかおとし穴に落ちてばっかりだから(笑)
100%の共感かな(笑)


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「ながい坂」

おもしろいですね。さすがは山本周五郎ですが、一点だけ、銀杏屋敷の場面は、当時の読者サービスなのかもしれませんが、あまりいただけません。後に藤沢周平の『風の果て』を読んだとき、藤沢版『ながい坂』だな、と感じました。いずれも名作ですね。

No title

narkejp さん、こんにちは。

>銀杏屋敷の場面は、当時の読者サービスなのかもしれませんが、あまりいただけません<
いただけないという気持ち、わかります。
それから読者サービス、そうですか、そういうこともあるんですね。


藤沢周平の『風の果て』ですか、読んだことないですね。
というより藤沢作品は、『漆の実のみのる国』と『蝉しぐれ』だけなんです。

2作品ともとてもよかったので、藤沢作品を読んでいきたいなという気持ちは持っています。ただ、あまりにも膨大な量なので、どれを手に取ったいいかわかりません(悲)

narkejpさんお勧めの『風の果て』を3作目の候補とします!
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