歴史小説における名前の扱い方

歴史小説あるいは時代小説において名前の扱い方は慎重であるべきです。

「のぼうの城」は歴史エンターテイメント小説としては、いい作品だと思います。
ただ一つだけ引っかかり続けているのがあって、それをここで書くことにしました(笑)

小説の冒頭部分に
「秀吉は、三成が32歳となった今も、堅い「三成」という名乗ではなく、「佐吉」と初名を呼んで~」
とあります。

ここなんですが、

江戸時代以前において、どの身分に当てはまるかよく知らないのですが、少なくとも武士においては、(いみな)は呼ばないということを聞きました。

説明しておくと、昔の人には名前が2つありました。「諱」と「」(あざな)です。

たとえば源九郎義経は、諱が九郎、字が義経。坂本竜馬直柔(なおなり)は、諱が竜馬、字が直柔です。

周囲の人間は本人に対して、「九郎殿」とか「竜馬殿」とを使って呼んでいたはずで、義経とか直柔と言わなかったはずです。

諱を呼ぶことはタブーだったのです。

逆に、死後は諱を使わなければなりませんが。


作家が、歴史小説あるいは時代小説(両者の細かい区別はここでは問いません)を書くときは、名前の取り扱いを自分なりに決めて書かなければならないと思うのです。

方針さえきちっとして、統一した扱い方をすればいいわけで、いちいち作品のなかで断りを入れてもらう必要はありません。

そこへ先に引用した「堅い三成という名乗」ときたので、あれ?作者はどういうつもりで「堅い」と書いたんだろう? 諱と字のことを知っているのだろうかと疑問に思ったのです。


名前の取り扱いで見事だったのは、数ヶ月前によんだ山本周五郎の『樅ノ木は残った』ですね。

会話文では一切「諱」が使われていません。

仙台藩独特の領国統治があって、各地に要害があって、そこに重臣が住んでいます。小説では相手が重臣であれば、その要害名を使ったり、官職名や通称だったりします。家臣であれば字を使っています。

すっきりとした使い方だったんですね。小説における名前の取り扱いはこうでなくては!と思ったほどです。


その後に詠んだ「のぼうの城」は運が悪かったかな?
「樅ノ木は残った」の前であれば、あれ?と思ってもそのままスルーしたかもしれません(笑)

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