樅ノ木は残った

司馬遼太郎が「井伏さんのこと」という文章で、次のように書いています。

「素朴なことをいうようだが、文学という言語の秩序体系は、つづめてしまえれば作者における心の高さに帰してしまう。私ども読者はその自然な高さについ魅入られて読みすすむものらしい


心の高さ、まさにそれを「樅ノ木は残った」に感じます。

つまり作者である山本周五郎に、さらには主人公である原田甲斐に感じるのです。

原田は伊達騒動(江戸時代の三大お家騒動の一つ)における極悪人とされていますが、山本周五郎はその通説に真っ向から挑んでいます。

しかも40年をかけた宿願であると巻末の解説に書いてありました。若いころから「原田甲斐は決して枠人ではないんだよ。ぼくは将来、かならず伊達騒動の原田甲斐を書くぞ」と言っていたそうです。

樅の木1

伊達宗勝(伊達家一門、政宗の十男)が酒井忠清と組んで、伊達家の半分を自分のものにしようと企み、様々な画策をします。
それに対抗して主家を守ろうとする人たち、そのこ原田甲斐がいます。作戦を練り実行します。原田が宗勝側の懐に入るのです。このことはごく限られた人しか知りません。
伊達家家中は原田が宗勝側の与党になったと見なされます。敵を騙すにはまず見方からというのを見事実践しています。

しかし、原田本人にしてはつらいことです。作者は原田の言葉として言わせています。
「意地や面目を立てとおすことはいさましい。しかし、侍の本分というものは堪忍や辛抱のなかにある
これは侍に限らない、およそ人間の生き方とはそういうものだ」


下巻の途中で、つらくて読めなくなりました。上巻において、相手の懐をに入る作戦を開始したあたりから、原田の苦しさがじわりじわりと伝わってきます。
陰謀が進んで最終段階になるあたりでは、川の水かさが増し、今にも決壊してしまうような圧迫を受け、原田は耐えきれなくなります。
同志であり今は亡き人に向けて言います。「どうなるのだ、これからどうなっていくのだ、おれは続かない、おれはもう挫けてしましそうだ」

  読んでいるこちらも耐え切れなくなりました。苦しくて、つらくて・・・
  一ヶ月ぐらい放置していたかな。


結末は原田が予想しなかった刃傷事件になります。
自分が切られても、あくまでも自分の乱心ということにして収めようとし、陰謀から伊達家を守ります。
原田家は断絶、甲斐の子や孫は死罪という処置が下されます。


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